Masuk3.
第三話 力量差を見極める
(あなたの好きそうな仕様にしたとか言ってたなアイツ。RPGのことかよ。ていうかこれ本当に現実か? 幻覚見てないよな?)と不安になるジンギ。
「しかし、先生は守護騎士か。ピッタリだな」
「何のこと?」と西川晃(にしかわあきら)が言う。ジンギはアキラのその高い雀力と知識の多さに敬意を表して『先生』と呼んでいた。
「いや、なんでもない」
そこへマネージャーの萬屋がやって来た。
「おう、ギンジ。来てたのか、いつも協力ありがとうな」と言う萬屋勝の上にはバトルマスターLevel65とあった。
(お! 上級職バトルマスターのレベル65だと?! やるなマサルめ……)
「あー、ジンギさんー。いらっしゃいませー!」と挨拶しに南上虎徹(なんじょうこてつ)がレジ奥から寄ってきた。
「よう、コテツ!」(こいつは何て書いてあるのかな)
すると、コテツのジョブは意外にも基本職の(魔法使い)と出ていた。
(なんだ、こいつあんなに強いのに基本職か)
しかし……
魔法使いLevel97
「きゅっ、きゅうじゅうなな!?」
「何を言ってるんださっきから?」とマサルが言うがそれどころではない。
(レベル97とは経験値いくつで辿り着くんだ、もうあと2で上限じゃないか。この男、若いのにとんでもないレベル。よほど鍛錬していたのだろうな。あの力は才能だとばかり思っていたが…… 誰よりも努力の男だったか……)
その日、この3人との麻雀をしたが、萎縮してしまってぼろ負けした。自分の職業やレベルはまだ知らないが、絶対この3人に勝ててる気がしないのだ。
(知らない方が良くなかったか? 足枷になってる気がするが)
まだ、ジンギはこの能力の使い道をわかっていなかった。これは勝てない相手と戦う事を避けるための能力。つまり、ギャンブルで生活していくためには最も重要な『力量差』を見極める能力なのである。だが、そんな素晴らしい力だということを理解してないジンギは「ちくしょー。変なもの見たから意識しちまって負けたじゃねえか! なんだあの力」と、文句を言いながら帰るのであった。
51.二章 最終話 好みの切り その後も桐谷は萬屋や並木さん。新田や椎名といった一流や超一流の打ち手の後ろ見をして徐々に作品を作っていった。 彼らの麻雀は本当に面白かった。ある時は3面待ちになれるものをシャンポンに受けて狙い撃ちしたり、ある時はとんでもない遠距離から仕掛けてチンイツに仕上げたりと魔法のような麻雀だった。 彼らの麻雀を見てからというもの自分が麻雀をしてる時もただ漫然と打つのではなく彼らだったらと考えて、どうすれば彼らの麻雀に近いだろう。何を切ったら劇的展開になるだろうという事ばかりが頭に浮かぶようになった。 作品作りを頼まれて以来、家にいても仕事してばかりになった桐谷。「ススムくんまた仕事してるの? ずいぶん勤勉になったわねえ」「元からだよ。凝り性なのは生まれつきさ。ただそれが今まではギャンブルに凝ってただけ」「まあ、真面目に働いてくれて良かったわ」「今までは真面目にギャンブルしてたからなぁー」 そして月日は流れて……「できた! ビデオドラマ完成だ。記念すべき第1作目!」「タイトルは?」「『雀荘流浪物語』だ」「なんか、ちょっとそのタイトル男臭すぎじゃないですか? ラブコメ要素もある内容でしたよね」「じゃあどんなならいいんだよー」「えっ、分かんないけど。もっと平仮名を入れるとか?」「『雀荘るろう物語』とかか?」「あ、少し良くなった気がする!」「雀荘ってのがあまりな~。雀荘抜くか」「『るろう物語』じゃ何の話か分からんな」 あーでもない、こーでもない、あーだこーだ タイトルがイマイチ決まらず話し合いは延々と続いた。そして。「よし、もういい、各自の宿題にしよう。家でゆっくり考えることにして今日は解散!」──────後日「タイトル決めてきたかー?」 タイトルの発表会が始まった。 色々な案が出たがどうにもイマイチ。各々が考えたタイトルはどれも満場一致するような全員がピンと来るセンスのものは出なかった。そして桐谷が発表する番になった。「タイトルは『あなた好みに切ってください』略して『あな切り』です」「ほう、そのこころは?」「はい、この麻雀ドラマは毎回絶妙なバランスの手をクローズアップしてます。正着打の追求ではなくプレイヤーの個性が光る一打を取り上げて作ったそれがこのドラマの見どころなはずです。つまり
50.第三話 富士の萬屋 おれはアイデアを得る為に兎にも角にも雀荘へと行った。凄腕の麻雀を見ていれば何かひらめくかもしれない。 というわけで、今日は並木さんが働いているという雀荘『富士』に行ってみることにする。────「いらっしゃいませ!」 元気よく挨拶をしてきた人物はまだ若く見えるがこの店を仕切っているようだった。並木さんもいた。「お、いらっしゃい。久しぶりだね、桐谷さん」「並木さん、お久しぶりです。今日は麻雀を打つより後ろ見がしたいんですが……いいですか? もちろん、多少は打っていくつもりですけど、並木さんの麻雀が見たくて」 後ろ見は基本的に禁止している店がほとんどだ。断られても仕方ないが……どうだろう。 すると。「私と並木さんの間からなら見ても構いませんよ」と店主らしき男が許可をくれた。「あ、ありがとうございます」 場面はもう南入していた。店主と思われる男は持ち点が少なく、オリてはいられない場面。しかし、北家が役の見えない仕掛けをしていてテンパイ気配。そこに最も危険と思われる生牌の北を引かされてしまった。ドラは①。店主手牌 南家三三四四伍六④⑤34678 北ツモ(この手、北は押すのかな? かなりの確率で北がもう当たりな感じだけど、でも、オリててもジリ貧なだけ。どうする)打四(保留ね。北はさっさと切るもなにも、もうテンパイしてそうだもんね。テンパイしてから腹くくって勝負か)
49.第二話 脚本家「――というわけで昨日は朝まで麻雀観戦してたんだ」「朝までずっと? 見てるだけでそんなに楽しいの?」「見てるだけって言うけど、麻雀はむしろ見てる側の方が楽しいこともあるんだよ」 それは本当にそうで、今回のトップ目が配牌10種を流さなかった局も、後ろ見していたから(あ、流局だ)と絶望してからの11種目を第一ツモで引いたことによる流局回避だったと知ることができるわけである。手が進んだことによって無いはずの局が生まれたなんて面白いじゃないか。「まあ、とにかく何だっけ? ニッタさんって言ったかしら。仲のいいお友達ができて良かったわね。でも、私のことも忘れないでよ。同棲するって話も忘れてないよね?」「もっちろんだよ。物件探しはマイの次の連休に合わせるつもり」「やった! 約束だよ?」「うん、約束だ」──────ピロン 新田からメッセージが届いた。“よう、おれの麻雀は面白かったかい? ところで、桐谷君が麻雀を見るのが大好きってことは今回で理解した。そこでだ、そんな桐谷君にピッタリの仕事があるんだが、興味あるかい?” 仕事の話か。でも、麻雀観戦が好きだとピッタリな仕事ってなんだ。わからないが、新田は悪い奴じゃない、きっとまともな仕事な気がする。“その仕事。ちょっと興味がある。詳しく”と桐谷は返信した。すると――ピロン“麻雀のビデオドラマ作成スタッフが足りてないんだ。見てる側が興奮するよう
48.ここまでのあらすじ ギャンブラー桐谷進は新田忍という若者に誘われて原木中山(ばらきなかやま)駅へと行った。そこには民家を改造した雀荘があり、腕を認められた打ち手しかここには誘われないという。気を良くした桐谷は調子良く打っていたが、そこに大地震が発生した。【登場人物紹介】桐谷進きりたにすすむ主人公。プロのギャンブラーではあるが麻雀だけはまだ未熟。最近はちょっと上手くなってきたかも?長根尾舞ながねおまい桐谷の彼女。美容室『エクセレントヘアー』のスタッフ。背が低く、顔立ちも幼いので若く見られがちだが実はエクセレントヘアーいちのベテランである。新田忍にったしのぶ紹介制雀荘である麻雀『友』の営業係。いい腕してるなと思った人を誘ってくる役。盲牌が得意で手先の感覚が常人離れしている。その3第一話 見る楽しみ 気がついたら長根尾舞からの着信が何回もあった。それはそうだ、大地震だったのだから。「ちょっと、電話してきていいですか」「あ、じゃあおれも」「おれは帰ってこいってさ。今日はもうだめだ」「ま、この大地震じゃね。お開きにしますか」「まだ余震もあるしね」 そんな流れで桐谷の方の卓は潰れてしまった。一方、新田の打っている東風卓は麻雀狂いの集まりなのか地面が揺れたところで解散するような連中ではなかった。 桐谷はマイに連絡を入れようとしたが電話が繋がらない。回線が混み合っているのだろうか。よく見たらマイからメッセージが届いていた。“無事なの? 私は大丈夫。心配してます” 通話がいつまで経っても繋がらないのでメッセージだけ残すことにした。“おれは大丈夫、全く問題ない。マイが無事なら安心した” しかし、どうしたものか。桐谷の家まで帰れる終電はもうない。(ま、いいか。とりあえずここで待つことにしよう)「すいません、後ろ見ってしてていいですか?」「椅子に座って少し離れた位置から見る分にはいいですよ」 そう言うと明子さんは丸椅子を持ってきてくれた。桐谷は新田の手を見て勉強することにしてみた。東3局親 新田16800点持ちラス目の配牌新田手牌 切り番二三四②③③④④⑥⑥3446 ドラ②打6 とんでもない配牌が来てる! しかし…… 下家の配牌が酷すぎて、それゆえに下家は逆についていた。下家 43000点持ちトップ目配
47.第十話 あえてのハイテイ回し 地震による小休止があったがリョースケの南場の親番からまたゲームは再開された。しかし、どこか緊張は緩みリョースケはふと無造作にドラの⑧筒を捨ててしまう。すると「ポン」(あっ、しまったーーって言ってもこんなん持ってらんねえのも事実。結局いつか切るしかないんだし、まあいいか)という顔をしている。瞬間の表情変化だが、おれにはそう見えた。 その数巡後――「リーチ」 リョースケの攻撃だ、そりゃそうだろう。ぐちゃぐちゃからドラを切ってきたわけはないのだから。しかし!「ポン!」 西家も負けじとポンで参戦! ドラポン者もいてリーチ者は親だと言うのにだ。さすがはこの店で打つことが許されているメンツだ。そう簡単に降りてくれない。 だが3人が前に出てきたにも関わらず当たり牌は北家に吸収されていき、決着がつかないまま終盤になっていった。 親のリョースケの最後のツモ番――ツモ5 5索はリョースケもおれも捨てている牌である。打5 この時どこかホッとした表情をしたのをおれは見逃さなかった。「チー」打8「えっ!」 一度は捨てた牌をチー。しかもそれによりリーチしてる親にハイテイが回る。こんな鳴きってアリ? みんなそう思ったと思う。しかし、おれには自信があった。(これは鳴いた方がいい)と。「変な牌持ってくるなよ~」とリョースケは言いながらハイテイ牌を引く。 最後のツモは大きなピンズの感触。これはわかりやすい。盲牌でもすぐわかる①筒だ。おれの仕掛けはタンヤオ本線なので(これは大丈夫だな)とリョースケは安心して切る。が。打①「ロン!」「まじすか!?」桐谷手牌六六②③567(45チー6)(⑧⑧⑧) ①ロン「8000」「そっ、それ。前巡の5索チーってしなくてもテンパイしてたやつじゃないですか??」 そうなのである。5索は鳴く前も456678でテンパイしていた。それをわざわざ鳴いてさらに親にハイテイを回したのだ。「①はまだ山にあると思った。でもハイテイならアガれるけど北家さんは降りてるから期待できませんよね。なら自信なさげなリーチ者にハイテイ引かせちゃえばチャンス広がるかなって」「やられたー」39000点対30000点 ついに9000点差まで追い詰めて受け取った配牌は――「リーチ」 ダブリーだった。
46.第九話 ギャンブラーという人種 東場が終わり南入したそのタイミングで勢いよく大地が『ドン!』と縦に揺れた。「わわっ! 地震だ! デカいぞ!」 直下型地震だった。震度5くらいだろうか。大きな縦揺れでサイドテーブルの飲み物が倒れた。しかし麻雀牌はと言うと……ガッシリ だれか指示したわけでもないのにおれ含め全員が自分の手牌を伏せて自分の前の牌山を倒れないように押さえていた。誰一人避難しようとかはしていない。バカである。 それどころか東風戦の卓の方などは揺れが弱まるやいなや片手を離して手牌を全員伏せたまま盲牌でゲームを続行したのである。(スッゲ…… 誰も手牌開いてないよ。ていうか少しは確認しないのかな)「リーチ」(げえっ! 新田のやつ。伏せたままリーチまでしたぞ!) こちらの卓は揺れが収まってきたので溢れた飲み物を拭いたり、ハンガーごと吹っ飛んだ上着を拾い上げて綺麗にはたいたりと、ゲーム再開はまだせずに小休止にしているのに。 東風戦をやる奴らはせっかちだと聞いてはいたけど、それにしてもなんて連中なんだ。サイドテーブルにぶちまけたコーヒーが気にならないのだろうか。「一発、ツモッ」新田手牌二三四①②②③③④4588 3 ドラ⑤ 裏ドラをめくる。②筒だ。「裏裏でハネセンゴ」「ハネセンゴだあ? 新田おま、ふざけんなよ。その3-6索待ち、場に5枚切れてんだろが! 普段それリーチしねえやつじゃねえか」「伏せたままテンパイしてリーチっていうのがカッコいい気がしてやったんだろ。それ以外理由ねーもんな。マジで迷惑なタイミングで揺れやがって。地震ぶっころす」「おいおい、そんなくだらない理由でおれは6000失点するのかよ。揺れてなきゃピンヅモの700失点で良かったものを」「ふふふ。天はおれに味方した!」「どっちかってーと天じゃなくて地だけどな。味方したの」(たしかに)「とにかく、3000.6000の3枚っす」「ついてんなぁ新田くん」 東風卓で新田がラッキーハネマンをツモったのを見届けると東南卓もゲームを再開した。 余震はあったが始まってしまった戦いを最後までやり切らないという選択肢はここにいる誰にも無い、というより思い付きもしない。それがギャンブラーという人種なのだった。
17.ここまでのあらすじ 相手のステータスを把握する能力のあるジンギ。 今日の遅番仕事は早く終わり時間があるのでジンギは久しぶりに遠出することにした。電車に乗って雀荘のありそうな街へと行くことに。 とりあえず千葉県船橋市へ――【登場人物紹介】北山銀次きたやまぎんじ通称ジンギ主人公。元詐欺師。悪から大金を奪う現代の義賊のようなことをして2億円持っていたが今はもうない。萬屋勝とは親友。萬屋勝よろずやまさる通称マサル雀荘『富士2号店』の責任者。北山とは幼い頃からの親友でお互いに認めあうライバル。西川晃にしかわあきら通称アキラ『富士2号店』の早番店員。北山はその実力
16.第六話 蘭との出会い ジンギは麻雀大会までに点数計算をマスターした。……が、符計算の必要なアガリを一切しなかったという。最後まで満貫級以上しか作らないまま敗退。結局、優勝は本命にもってかれた。 その後は自分なりに強くなるよう何切る問題のドリルをやったり競技プロのトップリーグを観戦したりして研究に研究を重ねた。なるべく安上がりな方法で。なにせ収入源が麻雀しかないのである。強くなる以外に明日を生きる手段がない。 そのプロリーグを何度も見に行くうちに1人の背の高い美女に話しかけられた。「お兄さん、ずいぶん熱心ねぇ。競技麻雀プロの方?」「いや、ただ無料だから来てるだけ。ためになるし
15.第伍話 ジンギ、特訓する ジンギはその後も順調にレベルアップしていった。自分が強くなっていることをレベルアップ通知音で知ることが出来るので面白かった。 しかしそんな日々も長く続きはしない。なぜならジンギはまだ符計算を覚えていないから。(最近レベルアップ音鳴らないな……)と思っていたその晩の夢の中。…ジンギ! ジンギ!! なんだよ。…そろそろ点数計算くらい覚えたらどうですか。自分の仕事のことですよ? めんどーなんだよな。満貫にしちゃえばいいだろ。…ダマテン多用してるくせによく言うわね。今度ビルメンテナンスで閉店になる日にお店の人たちで旅行するってマサルさんが言ってました
14.第四話 闘士の剛腕 その日ジンギはシフトを入れていなかったけど暇だから店に顔を出してみた。(マサルからはいつ来てもいいと言われている)すると見知らぬ男が働いていた。「いらっしゃいませ。おしぼりをどうぞ。お飲み物は何に致しますか」「コーラ。きみ新人?」「はい。コーラですね。待ち席までコーラお願いします。 新しく入店しました髙橋(たかはし)です。よろしくお願いします」「おれは北山。ここではジンギって呼ばれてるから。よろしくな」と言って挨拶を交わすとジンギは腕に付けていたゴムで長髪を後ろに一つ結びにする。それはジンギの戦闘準備だ。「わかるんだよオレ。勘だけはいい方だからな(見







